第1章:アンケートは正直に

2/29

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/65ページ
 それは太陽の光が街中を焦がさんばかりに照りつける、晴れた日のこと。俺、浦凪 浅緋(ウラナギ アサヒ)はぐったりと机に突っ伏していた。  俺の席はこの、私立星辰学園高校二年一組の教室の中でも窓際の一番後ろにある。一日中ぽかぽかと暖かく、先生の目にも付きにくい特等席とも言える場所だ。  しかし、この時期ではそんな好条件も裏目に出る。  今日はまだ湿気が多く暑さも残る9月2日。学生の心のオアシスである夏休みも終わりを告げ、昨日から第二学期が始まったばかりだ。  そんな中で、節約の二文字を掲げながら使用される冷房の風はずいぶんと心許ない。直に日の光を浴びる事になる窓際の席は完全にはずれくじと言っていいだろう。  実際、俺はこうして玉の汗を浮かべてぐったりするしか出来ないわけだし。 「今なら干物にされたアジの気持ちが分かる……」 「あはは、昼間から見てるこっちが暑くなるくらいの見事なだらけっぷりだね、アサヒは」  声のした方へ顔を向けると、ふわふわしたショートカットの少女が俺の方を見てにこにこと微笑んでいた。窓から射し込む光を受けて、星の飾りが付いたヘアピンがキラキラと光っている。  ご丁寧にも俺の独り言に答えたのは、どうやらこいつのようだ。 「なんだ、お前か……」  俺はそれだけ言って顔を伏せると、再び机に体を委ねた。
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加