第1章:アンケートは正直に

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「ねぇ、アサヒは今日返ってくる検査の結果、どうだと思う?」 「検査の結果……?」  そう繰り返して、俺は首を傾げる。はて、いつか検査を受けたことなんてあっただろうか。  そんな反応を見た祈里は信じられないとでも言うように目を丸くした。 「嘘、忘れたの? 『職業選択・適性検査』。夏休みに入る前にアンケートをやったでしょ?」  あぁ、そういえば一ヶ月ほど前にそんなものもあった気がする。たしかマークシート方式の、質問数がバカみたいに多いアンケートだった。  その質問の内容も『朝食を毎日食べるか』というようなものから、『目の前で引ったくりが起こったらどう対処するか』、果ては『三つ並んだカラーボールがあるとして、真ん中は何色か』なんていう心理テストのようなものまで様々。  最初こそ真面目に答えていたが、わずか数十問で飽きて、後はほとんど無心でマークシートを塗りつぶしていた記憶がある。 「あれは今年から新たに採用された国の政策で、就職活動が実を結ばない人達への救済策なの。アンケート結果から自分に向いている職業を判定してくれて、さらに最もふさわしいと判定された職業に対しては国の推薦状がもらえる」  例えばアナウンサーの推薦状をもらった人が実際にアナウンサーになりたいと思った時、それを提示すれば就職が少し有利になるのね──と、彼女は説明した。
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