第1章:アンケートは正直に

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 なるほど、話を聞く限り確かに超重大イベントだ。なぜ俺はそんなことも覚えていなかったのだろう。  ──説明の時に寝ていて聞いていなかったのか。 「高校二年生のこの時期にやるのは判定結果をみてから進路を決められるようにするためで、大学生や社会人は希望者だけが受けられるみたい。あーん、結果が待ち遠しいよー」  祈里はにやにやしながら、足をじたばたと動かす。早く結果が知りたくてうずうずしているのだろう。 「なぁ、そんなに結果が気になるってことは、お前は何か就きたい職業があるのか?」 「あるもなにも、そりゃあるよ。ありまくりだね」 「へぇ、何になりたいんだ?」 「動物が好きだから、ペットのブリーダー。あと、昔から憧れてた小学校の先生。 他にはCAさんとかナースとか…… キャリアウーマンっていうのもカッコいいよね」 「なるほど。ありまくりだな」  そんな会話をしていると、不意にキーンコーンカーンコーンとチャイムが鳴った。今日は午前中だけで学校が終わるので、そろそろ帰りのホームルームが始まる頃だ。  祈里が慌てて自分の席へと戻ると、ちょうど担任の熱血社会科教師・茨木先生(ばらちゃん)がガラガラとドアを開けて教室へ入ってきた。 『きりーつ、れい、ちゃくせきー』  日直が半ば流れ作業で号令をかける。着席したクラスメイト達の視線は、すでに先生の抱えているクラス人数分のプリントに釘付けになっていた。
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