第1章:アンケートは正直に

6/29
前へ
/65ページ
次へ
「えー、みんな知っているとは思うが、今日は職業選択・適正検査の結果が渡される。これは次世代の社会を担うお前らに将来の事を考えてもらうのが目的で、俺ら教員からすれば大切な生徒であるお前らの……」   能書きはいい!  生徒を思うなら早く結果を返せ!    いつものようにだらだらと長話を始めた先生だったが、そんな生徒達の言葉を受け、『もっと先生を敬え』とぼやきながらも渋々切り上げる。 「それじゃ、名前を呼ばれた奴から取りに来い。相澤、石川」  相澤と石川が席を立った。どうやら、出席番号順に返却されるらしい。  俺、名字があ行だからいつも最初の方なんだよな。  中学校三年生の時なんかは一組の二番だったから、卒業式の後半が退屈だった。  ちなみに今はちょっと遅めの五番だ。 「臼井、海原」  少しどうでもいい事を考えている間にもう四番目の海原が席を立った。俺は呼ばれたらすぐに取りに行けるよう、腰を椅子から腰を浮かす。  しかし── 「小川田」  ガタガタガタッ! と大きな音を立て、足がもつれた俺は机に倒れ込んだ。え、何、飛ばされた?  ばらちゃんの方を見ると、何事もなかったかのように次々とアンケート結果を返却している。気づいていないのだろうか。  数人のクラスメイト(とは言っても主に祈里)からクスクスと笑い声が聞こえる。  
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加