9人が本棚に入れています
本棚に追加
日が沈む。
街が昼間のざわめきを失い、夜の独特な冷たい空気を帯びていく…
さあ、BAR『Snowdrop』をOPENする時間だ。
「さて、今日はどんな人が来てくれるかな?」
わくわくしながら入り口を見つめる
―――開店してから二時間は経つが、お客さんは来ない。
そろそろ目が疲れてきたよ。
「いや、来ないのが普通か…」
ぼそりと呟いた言葉が静かな店内に吸い込まれる。
そう、
わざわざ人目に付かない所に店を開いたのだ。
なので、たくさん来られても困るというものだ…が、さすがに経営者としては苦しい所がある。
カランカランッ
不意に乾いた音色が響く
「んっ…やあ、いらっしゃい」
入り口の方を向くと不思議そうな顔をした旅人が入ってきていた。
「……開いてます…よね?」
無理もない、誰もお客さんが居ないんだ。
そう考えるのが正しいよ。
「うん、開いているよ
ささっ、どうぞ座って」
「あっ、はい」
ギィッ…
コトッ
お客さんが座ったタイミングでコップを出す
「疲れているだろうからね、冷えた麦茶のサービスだよ」
この速さには自信があるんだ。
多分、他の人にはマネできないと思う。
「あ…ありがとうございます…」
旅人は、ごくごくと喉を鳴らして麦茶を飲み干した。
ああ、いい飲みっぷりだよ。
だけど、常連さんにはなってくれそうにないね…
「ふぅ…」
さて、始めますか。
最初のコメントを投稿しよう!