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部屋に戻って勉強しようかと思ったけど、頭が回りそうになかったので、そのままベッドに入って電気を落とす。
姉貴が今朝酔っていたのは、ストレスに押し潰されまいと抵抗した結果ではないか、そんな下らないことを今更になって考える。
だけど、それで悪酔いしちまったら、ストレスに白旗を振ったようなものだろ。
ほんと、バカなやつ。
――姉のことを考えていると、姉と積み重ねてきた良い記憶、悪い記憶が脳裏に浮かんでくる。
今となってはどれもいい思い出だ。
思えば俺は、親に可愛がられなかったけど、寂しいと感じたことは少なかったな。片桐先輩じゃないけど、一人っ子じゃないことに救われていた。俺の人生に姉貴が居てくれて良かった。強気で賢くて嫌味な性格だけど、根は優しい良い奴なんだ。
そんな姉は今、どうしようもなく苦しんでいて、もしかしたら俺が力になってやれるかもしれない。他の誰でもない、俺だけが!
「……モヤモヤする!! あークソ! なんなんだよ今日のあいつは! 病むのは勝手だけど、俺にそんな姿見せるなよ、気持ち悪い!」
できることなら、やっぱり力になってやりてぇ! でも、ここで俺が出て行って「俺と一緒に寝るか?」なんて恥ずかしくて言えるわけねぇー! 考えただけで恥ずか死ぬわっ!
トントントンと、弱々しいノックが叩かれた。
「あ、姉貴か?」
「当たり前でしょ、二人暮らしなんだから……。私じゃなかったらホラーよ」
この嫌味な言い方、呆れた感じの冷めた声、間違いなく姉貴だ。
姉は許可を取ること無く部屋に入ってきた。明かりも点けず。ベッドに胡坐を掻いて座り直す俺に迫って来た。
「寂しい。どう考えても、どう足掻いても、寂しい……」
“寂しい”が結界を破る魔法の言葉であるかのように、呟く毎に、姉がベッドの縁に右膝を乗せて近づいてくる。
「ま、マジか!?」
頭の端っこの方で密かにシミュレーションしていたけれど、いざ現実となると、なにをどうていいのやら。
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