物憂いな姉

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「あんたが無効にしたいのなら無効にしようとも思った。あんたが帰ってきて、腹立たしいけど、凄く嬉しかった。あんたに冗談か本気か問われて、答えに迷って答えられなかった。今晩一人で寝れたらそうしようって思ったけど、あんたが部屋に戻った途端……胸が苦しくなった! 私……死ぬのかなー?」  姉の声が震えている。弱々しいを通り越して、まさしく死ぬ前に力を振り絞ってどうにか言葉を吐き出しているような声だ。  突っ込みたい箇所がいっぱいあるけど、その中から一番を選ぶのは一瞬だった。 「し、死ぬわけないだろ!? ってか、死なれたら俺が困る。……経済的な意味で。いや、それ以外の意味でも、色々と困るよ」 「あんたの事なんかもう知らないわよー! イヤだー! 仕事行きたくない! ずっと……部屋で寝てたい。誰とも会いたくないし、よく分らないけどもう疲れたー。私頑張ってるのに……なんでこんなに辛いの? 一人で居るのが凄く怖い……。誰でもいいから側に居て欲しいの」  なんだよそれ……どうしてそこまで苦しむ? お前が頑張って働いているのを、俺は知ってる。こんなになるまで耐えたんだ、大変……だったよな。  お前はもう少しくらい報われたって良いんじゃないか?  頑張って、傷付いて、また立ち上がろうとする人を応援したくなるのは、普通だ。相手が姉弟なら尚更だ! 「チクショー姉貴! ……俺の負けだ、煮るなり焼くなり抱くなる刺すなり好きにしろ! ……お前が苦しそうなの見てると、なぜか俺まで悲しくなってくるから、もういいよ、分かったから」 「弟のくせに……腹いせに後で肉まん奢ってやる!」 「肉まっン!?」  姉が俺の体に突っ込んできた。手を俺の体に回す。力強いタックルに体を倒される。思いっきり抱きつかれる。痛いけど、痛みは気にならない。 「ムカつくけどー……あんたに抱きつくの気持ちいいよー。なんでなのー」 「……寂しかったからだろ」 「やっぱりそうなのかなー?」 「俺に聞くなよ……」 「拒絶されたー……。弟に今拒絶された!!」 「拒絶って言う程のことじゃないだろ!? 違うからな、俺拒絶とかしてないから!」 「……そんくらい分かってるわよー! バーカ、弟のバカー!」  なんじゃそりゃ! こっちは気を遣ってやってんのに……。  なにを言っても難癖つけてでも絡んでくる気がしたから、俺は突っ込むのをやめた。
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