物憂いな姉

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 姉から匂いを嗅ぐような音が断続的に聞こえ始めた。声を殺して啜り泣きしているのだとすぐに気付いた。  ――なんだろう、この膨れ上がるやり終わった感は。達成感とは程遠く、切なくなる感じがどことなく喪失感に似ている。  嬉しくもなく、悲しくもなく、ただただホッとしている自分がいる。  ここで俺が――もしくは姉貴が、違う選択肢を選んでしまっていたら、姉貴の溜りにたまったストレスはどういう形で発散されたのだろう。  今のこいつを見てると、“寂しすぎて死ぬかも”あれはあながち冗談ではなかったんじゃ……。危うく俺は、一生で一番大切にしてやらなきゃいけない人を見捨てるところだったんじゃないか? ……ゾッとなった。恐ろしい。 「ありがとう……。わたし、あんたが弟で良かったかも」 「かもってなんだよ、かもって……」  そこは嘘でも断言しようよ。  二十分も経つと、お互いに落ち着きを取り戻して、一方が一方に抱きついて横になっている状況が恥ずかしくなってくる。  姉貴が何も言わないから、俺も何も言わない。  もしかしたら寝てしまったのかも。にしては、お腹を挟み込む腕に力を感じるーー気のせいか?  試しにアホなことを言ってみよう。 「恥ずかしさ耐久レースなう」 「…………ふふっ。バカ」  起きてたか……。
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