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俺の心配を余所に、姉は姉らしからぬカラフルで明るい衣装を見せ付けるように、その場で一回転した。
桜色のスカートの端がふわりと舞う。
「俺の部屋で暴れるなよ、埃が舞うだろ」
「……気の利いたコメントはないの?」
「スカートなんか履いて寒くないのか?」
「全然、寒くなーい。気の利いたコメント!」
いつもはクールに気取っていて陽気とは縁遠い姉が、まるで誰かに操られているかのようにテンションが突き抜けて高い。
あまりにもイメージと掛け離れた姉の馴れ馴れしい態度に、困惑せずにはいられない。いや、困惑というか、ドン引きだ。
「……気でも狂ったか?」
「もう、違うだろー! あんたは私をそんな風に思っていたの?」
そりゃー……大手企業に就職を決めたときには“凄い人なんだな”と感心したこともあったけど、少なくても今は“そんな風”に思っているよ。そう思わせているのはお前じゃん……。
「よそ行きの服を着て浮かれているのは分った。……どっか行くの? つか、どっか行ってくれない?」
「行くよ、どっかに行っちゃうよ。ふふーん。本日、彼女居ない暦イコール年齢の弟、の姉は、デートに行って来るんだー!」
うがー! と叫ばんばかりの荒ぶる熊のポーズを取った姉は、まるでこの世に一片の未練もないかのように、そのままのポーズでゆっくりと後方のベッドに倒れ込んだ。
まさかとは思ったが、その格好はやはりデートか。
嫌味を言われたあたり少し悔しいけど、それでどうして酔っているのか分らないけど、とにかく、良かったと思う。
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