物憂いな姉

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「お前、何時の間に彼氏を作ったんだ?」 「興味あるの? え? 興味あるの?」  興味ねぇよ。あったとしてもなくなったわ。 「彼氏はいないけど、デートなのよね~」  さいですか。 「まあ、上手くやってこいよ。お前の外出が増えれば、俺のテスト勉強も捗るし」 「はぁ? あんたのテスト勉強なんてどーだっていーし。……気持ちわるっ」 「こっちは応援してやってるのに、クソだなお前」 「気持ち悪いのはあんたじゃなくて、私の気分よ。バカ。……ちょっと飲みすぎたかも。はあ、眠いから寝るわ。一時間ぐらいしたら私を起こせなさい」 「起こ“せ”なさい……ってどういう日本語だ! バカはお前だバカ!」  ――返事がない、静かになった。  勉強机に向き直ってみたものの、勉強する気分になれない。完全に姉の奇襲で意欲を削がれた。  ベッドに仰向けで寝転ぶ姉は、スヤスヤと憎たらしい寝息を立てている。  本当に気合が入っているのだろう、通常運転ならば無難かつ簡単に済ませている化粧に、一切の妥協がみられない。  もともと姉は縦にすらっと長い美形美人だから、贔屓目に見ても綺麗な部類だと思う。 「? 姉貴、なんで唇に白い粉が付いてるの?」  気付いてしまった以上は気になってしまう。――まさか変な薬をきめたりして……ないよな? 違うとは思いたけど、今日のこいつのテンションはやっぱり変だ。 「こんなのはこうして拭いてやればっ、ふぅ。私の唇に歯磨き粉なんて付いてなかった! あーはっはっはっは! ……はぁんじゃ寝るわおやすみちゃんと起こせよ」 「歯磨き粉かよ!? ボケっ、つかコラ! てめぇ俺の布団に白い粉をこびり付けるな!」  ……起きてたのかよ、マジで、なんなのお前は。早くデートでもなんでも行って来いよ!
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