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「何しに来たんだよ! まさか、俺をからかいに来たわけじゃないんだろ?」
「そう言われると、からかいに来たような気もする」
「……なんで頭濡れてんの? デートは? ご機嫌斜めなのはデートに失敗したからか?」
姉は頬杖を付きながら首を軽く横に振った。そうじゃない、決め付けるな、とため息を吐いた。
「濡れたのは、そういうアトラクションに乗ったからよ。クソ寒い時期に私はイヤだって言ったんだけどね、濡れるのイヤだし。……でも行きたいって言われたら断りきれないでしょ?」
「ま、まあ、そういうものか」
「デート経験のないあんたに聞いても分らないか」
余計なお世話だ。
「んで、デートは成功。今日という良き日にまた一組カップルが成立しましたよー。はいはい良かった良かった」
「良かったと言う割には、嬉しそうに見えないんだけど……。隠さないで言えよ、気持ち悪いんだよ、何かあったんだろ?」
「…………」
「都合が悪くなったからって目を逸らすな……。大した理由でもないなら、俺はもう戻る」
「……全てが恙無(つつがな)く進行して、限りなくハッピーエンドに近づいた。ただそれが……」
「ただ、それが?」
「私のハッピーエンドじゃないことに、なんかスゲー下らなくなったっていうかさ。仲人を買って出たのは私なんだけど、二人がいちゃつくのを見せ付けられたら……人恋しくなった」
「ちょっと待て! 二人の仲人って……? ごめん姉貴、いったい何の話をしてんの?」
「……要するに、寂しいのよ。私は寂しいの!」
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