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なんだそのオチは……?
お前の言うデートは知人のデートの仲人だったのか? 髪が濡れているのも……まあ、いいや。
高三になって熱心に取り組んでいた部活を引退してからというもの、交友関係を絶つ勢いで勉強に仕事にと心血を注いできている姉貴が、ふと人恋しくなったのも分らなくはない。
「だったら初めから仲人なんてするなよ」
自分から地雷を踏みに行くようなものだろうが。
「済んだことをとやかく言うな、あんまりイジメるとキレるわよ!? ……この辛いのと寂しさのは、どうすれば解消されるわけ?」
「俺が知るわけないだろ……」
「彼氏作って遊ぶほど暇じゃないし。ペット飼うのも考えたけど“負け組み”臭がしてイヤだし。女に逃げるのもいいらしいけど、私ノーマルだから抵抗あるし。いっそ奴隷みたいのが居てくれたら……良いと思わない!?」
「“そうだ、京都へ行こう”的な軽いノリで、俺に好奇の眼差しを向けるな!」
同情はしても賛同はねぇから。
「もう本当になんもかんもどうでも良くなって、寂しすぎて死ぬかも」
姉は何もない食卓に頭を乗せた。
「寂しいのはわかった。俺で良かったら力になるから、顔上げろよ。職場で行儀の悪い姉貴の姿を晒すとか、意外と俺へのダメージもデカイからさ」
「まさか、あんたに優しい言葉をかけられる日が来るなんて。私ほんとにヤバイかも……」
“俺に励まされる=ヤバイ”ってのはやめて欲しい。
姉が精神的に参っているってのは全面的に同意だ。
姉は弱みを見せない人だから、人恋しい云々は実は二次的なもので、本当に辛いと感じているのは仕事や人間関係によるストレスなんじゃないかと思う。
要するに、ストレスの捌け口として、彼氏なり彼女なりペットなり奴隷なりが欲しいのだろう。
「……弟の俺からしてみたら、お前は苦労人だよ。頑張ってるよ」
「本当にそう思う?」
「これでも一番近くで見てきたからな」
幼い頃から貧乏な家庭で――我が物顔で貧乏を助長するダメ親の下で、姉は狭い世の中を強気に生きてきた。面倒見も良い方だったから、俺の知らない俺にまつわる苦労も沢山してきたと思う。
その点俺は、姉貴の背中にただただ守られて生きてきた。現在進行形で、姉が大手企業で働いてくれているからこそ、ダメ親の手から離れ、取り立てて不自由のない楽な高校生活を過ごせているわけで。
――感謝はしている。口にはしないけど。
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