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『最近、夢に…夢に父が出てくるんです』
ティーカップをテーブルに置き、美奈子はとつとつと話し始めた。
『夢に…藤堂博士が?』
怪訝な表情を浮かべる清四郎に、美奈子はこくんと頷いた。
『はい、顔を白く塗り…サーカスのピエロみたいな感じなんですけど…あれは間違いなく父でした』
『で、どんな夢なんです?』
『ええ…最初はサーカスの女芸人とライオンが出てきて…私に何か言うんですけど…その後すぐにライオンが彼女の頭に噛みついて…』
その場面を思い出したのか、美奈子は両腕で自分の身体を抱き締めるような仕草をした。
『その次は…全裸の男女が出てきて…彼らも何か言うんですけど…私には…』
『そして最後に博士が?』
『はい、父が…父は私にニヤリと笑うと…「私の黒い精神はどこまでも自由だ」って言って…私はそこで目を覚ましましたの』
怖さを紛らわせるためか…彼女は自分を抱き締めている腕を、更に強くした。
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