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『さて…次の出し物は、なにかな?』
呟く清四郎の前に、毒々しい衣装を纏ったピエロが現れた。
『夢を覗くのは、悪趣味だとは思わないのかね?夢幻君』
優雅に最敬礼をした、ピエロはニヤリと笑った。それは…悪意の籠もった、凶人の笑みだった。
『お久しぶりです、藤堂博士。これも仕事なので…あ、余興はもう終わりでしょうか?』
清四郎はさして楽しくもなさげに、挨拶を返した。
『うむ…客が君だからな。必要以上にもてなす事もあるまい?』
笑みを浮かべたまま、藤堂は指を鳴らした。
次の瞬間、彼の顔からピエロのメイクが落ち…衣装も道化師のそれから、落ち着いたダークスーツに変わっていた。
『君と話すのなら、この方が楽だな』
藤堂は懐からパイプを取り出し、火を付けた。
その姿は、生前の高名な精神病理学の権威と持て囃された頃を彷彿とさせるものだった。
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