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目を開くと地面が目の前にある。
近づかない地面は、体が宙に留まっているようだ。
「死んだのか?」
霊体だとして、そこらを見回すが本体は見当たらない。
「体はどこだ? 死体がない」
遠巻きに観衆が集りこっちを指差して驚いている
「浮いてる!浮いてる!」
「………?
僕のことか?
え、見えてるの?
…すいません、ちょっと…」
と観衆に声をかける。
「手品ですか?」
「あれ?!確かにビルから落っこちて来たよね?」
「落ちる瞬間は見てなかったけど、びっくりしたぁ」
と観衆は騒ぐ。
まさか生きている…いやいや、浮いてるけど
「あの…僕の姿が はっきり見えてます?」
観衆が、それが何?といった顔でうなずく。
「死体ってここらに転がってないですよね?」
引き気味に観衆は後退る。
「あっ、ちょ……動けないな」
手足をバタつかせて起きようとするが、空中を反転するだけで、その場から動けない。
警官がやって来てソロソロと近付き聞いた。
「君、何してるの?」
「あ、あの、屋上から飛び降りたら、自分でもよくわからなくて…なぜか…浮いてて」
「『浮いてて』って手品でしょ、地元の人?名前は?」
警官がいぶかしげに詰問する。
「いや…ほんとに降りれなくて…」
だんだん恥ずかしくなり顔が赤くなる、こういう状況に弱い。
すると体がフワリと、その場から逃げるように空へと高く登っていく。
「ちょっと!待ちなさい!降りて来なさい!」
地上で警官が叫び、観衆から甲高い声が上がるのが聞こえる。
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