序章:幼き日

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子ども達の遊ぶ声が賑わう幼稚園。サッカーをしている元気な子ども達。ボールを無我夢中で追いかけていて、先生たちもそれを眺めていた。先生の一人、真希先生は子ども達が怪我をしないように見ていた。 すると、ガンッと鈍い音がした。真希先生が音がした方を見てみると園児の一人が倒れていて、痛みに苦しんでいた。真希先生が慌てて「どうしたの!大丈夫?どこに、ボール当たったの?」と園児に駆け寄った。すると、回りに来た他の園児達が「しん君が蹴ったボール」「蹴ったボールがゆうと君の顔にバーンって」「先生、ゆうと君大丈夫?」と口々に言った。ボールをぶつけてしまった慎君は下を向いて震えていた。 真希は、ある程度の事は理解した。慎君が蹴ったボールが侑斗君の顔にぶつかってしまったと言うことだ。「ゆうと君大丈夫?」と一人の園児が顔を覗き込んだ。「真希先生、ゆうと君、顔まっかで血いっぱい…」と言った。ハっとなって、覗き込んだ真希。侑斗君の顔は、まぶたが切れていて、頬も擦りむけており、鼻血が出ていた。他の先生たちは、それを聞きそれぞれ動き出した。病院に電話したり、侑斗君の家と慎君の家に電話をしたりと大忙し 「侑、ごめんね、本当にごめん」真希は声のした方を見ると慎君が、侑斗君に謝っていた。二人は家も近くて仲が良いと聞いた事があった。侑斗君は、「慎は、わざとやった訳じゃないだろ?だから大丈夫だよ」と、ニッと笑っていた。「真希先生、どうしました?」同期で入った美保先生が聞いてきた。「男の子って強いなって…」真希はそう言って、二人の近くに行った。その後、侑斗君は病院に連れていかれ治療をされた。病院では慎君のお母さんが、侑斗君のお母さんに謝罪に行った。「男の子だから、こういう事があっても不思議じゃないわよ」と笑って話していたらしい。次の日に登園して来た侑斗君は、切れていたまぶたは針と糸で縫われていて、頬には大きな絆創膏があり、幼い侑斗君には痛々しかった。慎君は、侑斗君が来ると真っ先にカバンを持ってあげたりしていた。何週間かして侑斗君の傷は良くなっていった。頬の絆創膏も取れて、まぶたの傷も抜糸した。だが、両方の傷は痕が残っていた。慎君は、それを見て罪悪感を感じてしまった。けれど、当の本人である侑斗君は、それほど気にせず「気にするなよ慎。こんなのすぐ消えるよ。」と、言っていた。その傷は高校生になっても消えてなかった。
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