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そんな周りの視線も気にせずに大倉は横山へと飛び付くように抱きついた。
否、視線に気づかないくらい横山の存在が大きかったとでもいうのだろうか。
抱きつかれた本人は「大倉、ここ楽屋や」なんて冷たく呟く。
そして簡単に横山は大倉の体を離した。
大倉は周りの視線とか、そんなことはどうでもよかった。
久々の温もりから離れたくはなかったのに。
「寂しかった…」
冷えた体を擦り付けるように横山にくっついては眉を八の字に下げて告ぐ。
そんな大倉を見て横山は小さくため息をつくと家に帰ったらなんでもしてやると告げて会話はそこで終わった。
他のメンバー達は大倉が可哀想だと誰もが文句を言ったが大倉は傷ついた心を誤魔化すように笑っては横山の言葉に素直に頷いた。
撮影は順調に進み、予定よりも早く終わりすぐに解散した。
楽屋を出た二人。
大倉は横山の半歩後ろを歩く。
久しぶりに会えたのに、なぜ彼は自分を求めてくれないのだろう。
照れ隠しといっても少しは自分を求めてほしかった。
なんでもいい、頭を撫でてもらうだけでも嬉しかったのに。
俺と逢わない間に好きな人ができたん?
そんなことを心の中から横山の背中へ問いかけてみたが答えはもちろん返ってこない。
否、返ってこないほうがいい。
自分ばかりが好きだなんて、そんなの悲しすぎるから。
考えれば考えるほど悲しくなり家につく頃には涙が溢れだしそうになっていた。
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