プロローグ

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 夕方頃に月讀(つくよみ)さんからのお使いを終えた私は急いで『常盤國』に帰っている。  だけど、お使いの場所は常盤國から離れた場所だった。帰ってる最中に深い霧が発生し、私から道を掻き消した。 「霧が深過ぎだよ」  私は小さく文句を言っては走り続ける。霧が出た頃から走り続けているが、左右が分からない状態だが何もしないよりはマシだと私は思った。 「これ以上遅くなると久遠(くおん)に怒られそう」  私は小さな友達の事を考えたら自然と笑みを零してしまう。心配症の彼は今でも私の事を待っているだろうか。 「どうしよう……」  此処は来た道か、はたまた見慣れない道かに私は着いてしまった。完璧に迷子になっている……。 「はぁ……疲れたよ」  もう何時間走り続けたか分からない。最早私の体は限界でその場に座り込んでしまう。 「ああ、久遠も連れて来れば良かった……」  そう愚痴を零しては涙が流れてしまう。昔から私は『一人』が怖い。  ――幼い頃からこの身に宿る『異質な力』のせいで一人ぼっちだった為、誰か傍に居ないと弱くなるから。 「誰か……居ないかな?」  居たとしても私には気付いてくれないだろう。こんな濃厚な霧の中で私に気付いてくれたら『奇跡』としか言いようがない。  一人が怖い私は誰か来てくれないか願ったが誰一人来ない。結局、弱さに負けてその場で泣いてしまったのだ。
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