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――ふと、私の手に何かが止まった感触がした。
「……ふぇ?」
私は手に止まった何かを見る。それは珍しい紫色の蝶々。
「蝶……々?」
私が蝶々を見たら勝手に飛んで何処かに向かって行く。
「あ、待って」
一人が寂しい私は蝶々を追い掛ける為に走る。良く考えたら蝶々は私を案内しているみたいな飛び方をしていた。
「霧が……薄くなっている?」
気のせいか、ついさっきまで濃厚な霧がどんどん薄くなっていく。お陰で左右が分からなかった時が嘘みたいな視界だ。
「何処まで行くのー」
私が蝶々に向かって言うと蝶々は一度大きく上下に動いてくれた。
――やがて、濃厚な霧が晴れた場所に蝶々は案内してくれた。
「……うわ」
着いた先には樹齢何百年位に達したと思われる巨大な桜の木。雲一つ無い満月の光が桜を照らして一層綺麗に見える。
「――ぁ」
桜の木に見取れていたら傍に別色に輝く何かを見付けた。
「……」
少ししてその何かが姿を現す。それは銀色に靡く髪を持つ男性、眼は紫色で縦長の瞳孔で――左側の頬に蝶々の形をした刺青(イレズミ)が見えた。
私の頭に一つの考えが浮かび上がった。彼は『鬼』である事を。
「《眠れ》」
低い声と共に私は急な眠気が襲う。――何時の間にか私は夢の術を掛けられたようだ。
「安心しろ。出口に連れて行ってやる」
意識を失う中、彼の声が何処か悲しく、優しく聴こえた。
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