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神の裏切りに唖然としていると、夏目は早足で此方に来ていた。そして、真正面の位置に立つと、お互いにお互いを指差して一言。
「「どうしてこんなところに……!?」」
発言がシンクロした。10,0点ものである。
なんとなく喋りづらくなる。先手の発言権を譲ろうとしばらく黙ったが、夏目も喋らず固まっていたので、レディーセカンドでいくことにした。
「俺は普通に自習してただけなんだが……なんで夏目はいるんだ?」
その言葉がトリガーとなり、夏目が「な!」と謎の掛け声と共に再起動を果たした。某アイドルが飼ってるエリート雄猫かお前。
「なんだ自習かぁ。良かった。あ、私は生徒会の仕事だよ。完全下校時間に帰ってない生徒を注意して回ってるの」
何が良かったんだろう。俺には意味が分からなかったが、夏目は勝手に自己完結して胸を撫で下ろしていた。
それよりも、俺は半年くらい見てなかった校則を思い出していた。そういえば確かに、8時には帰らなくてはならないって逆門限あったな……
なら、多分電気がついてるのはここぐらいになっているはず。
「なるほど、それで不自然に電気がついてたこの部屋に来たと」
「……う、うん。そういうこと。一般人にアレを見せるわけにはいかないからね」
夏目はあからさまに俺と視線を合わせようとしないで言った。
……夏目はおもしろい奴だ。普段は明るい清楚系優等生として扱われているくせに、ちょっと困らせると忽ちパニックになって天然のボケを繰り出す、完全なネタキャラになる。
どうして入ったか分からないが、この異様に目が合わない状態は芸人モードだ。こうなれば、適当に発言を指摘してやるだけで弱味が握れる。
例えばこのように。
「アレって?」
「!!………ぶ、文化祭の準備の案件なの!まだ一般生徒には秘密で……」
「俺に話しちゃってるけど」
「!!あ、あーと、えーとぉ……………………
し、仕方ないなぁ、この事は私と坂城君との秘密だよ!私たち生徒会は今年度、グラウンドに大きな……えー、
……世界一大きなお菓子の家を作る企画を用意してるんだ!」
「フーン、ソーナノカー」
夏目、せめて俺のおやつの板チョコから目逸らそうか。チョコが照れ溶けちゃうだろ。
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