① 白銀色に煌めく鋒

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    ▼    ▼    ▼ 日本において、遥か昔から女性は秘めるものがあると相場が決まっている。 その腹の内には、恋心や苦心、時には隠し子。いつの時代だってきっと誰にも言えない何かを孕んでいる。 それを男が無理に明かそうとするのは、些か無粋じゃなかろうか。 そんなわけで、一時間に及ぶ交渉に失敗した俺は家の近くにある高柳公園にやって来た。 ……結局、どういうわけで怒ってたのかさっぱり分からなかったんだが……そこは鈴葉の歪んだ愛情表現だとして決着をつけておこう。 そんなことを思いながら、俺は早速寝るのに良さげな場所の探索を始めた。 「クソっ……よく見えないな……」 昔から変わらない小さな子供ための小さな公園も、夜になると、肝試しのできそうなくらい不気味な雰囲気がある。 人目につかない利点こそあるものの、これはダメだ。ヤバイ。静寂ヤバイ。たまに聞こえる鳥の鳴き声ヤバイ。とにかくヤバイ。ヤバイヤバイ。 小学6年生以来5年ぶりに訪れた懐かしの場所であったが、俺の足取りは驚くほどに慎重だった。 べ、別にびびってる訳じゃないんだからねっ!茂みから強襲する野良犬を警戒してるだけなんだからっ!
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