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「ごぶっ!?」
真っ暗な空間に完全に入り込み、仮想世界を楽しもうと意気こんだ次の瞬間、鳩尾に強烈なダメージが入った。
同時に景色もがらりと変わる。
知ってる天井、部屋に射し込む斜陽、俺の腹部で仁王立ちするパジャマ姿の鈴葉。
どう見ても我が家です。
本当にありがとうございました。
「起きろ兄貴、もう朝御飯出来てるぞ」
鈴葉……お前なんてタイミングで夢をぶち壊しにかかってくるんだよ……
「へいへい……分かりましたよ……着替えてから行くから待ってくれ……」
俺は手を払うモーションをして鈴葉に退却を促した。
二回頷いて、わかればよろしいと言わんばかりの納得顔を浮かべると、鈴葉はジャンプして俺から退きそのまま部屋から出ていく。
おい、うっ、てなったぞ。
トドメさしにくるなこの妹め。
俺は悪態にならなかった悪態とため息を吐いてダラダラ着替え始めた。
と、ここで体の調子に狂いを覚えた。
……なんかかったるいな。
いつもよりダメージ量が少なかったのか?そんなことはないとは思うんだが……まあ、無理は禁物だよな。
学校を合法的に休める口実を手に入れたので、俺は再びぬくぬく空間に身を投じた。仕方ないよね嘘じゃないし。
するとそんな時、伝え忘れていたのか壁の向こう側から鈴葉の追伸が聞こえてきた。
「今日は兄貴の好きなクランベリージャムあるから早く来いよー」
「なにぃっ!?」
その後40秒で支度しました。
果物の究極にして真の頂点、クランベリー様を待たせるのは失礼だからな。
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