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「櫻、はやく行くわよ」
お母さんが幼い私の手を引く。
それにも構わず、私は見上げ続けた。
食い入るかのように。
一心に。
そのクセは昔からだった。
理由はわからない。
いつからかさえもわからない。
なぜか桜を見ると、昔からの幼なじみに会ったような懐かしさと胸を破られそうなほどの息苦しさをおぼえるのだ。
まるでそれは荒波のように。
ちっぽけな私はそれを避けることもできないで、ただ立ち尽くしていた。
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