プロローグ

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俺の名前は… そう簡単には名乗ってはいけない。 この記憶がもしも知られてはならない人の手に渡ってしまえば、組織は大きな痛手を負うだろう。 この世界では、記憶は簡単にコピーされてしまう。 保存することもできれば、売ることもできる。 もちろん、買うことも。 22世紀に開発された記憶管理システム、通称メモリーコントローラにより、人は旅行をしなくても海外に行ったと思えるような世界になった。 ずっと効率的で簡易で便利なこのシステムは世界に革新をもたらした。 メモリーキーパーと呼ばれる公式的な職をもつ人間が様々な記憶を管理している。記憶管理は重大な責任が伴う為、かなり大掛かりな制度、規則の元で行われているらしい。もちろん、扱う人間も輝かしい学歴とズバ抜けた才能、何より倍率250倍の試験を突破し資格を与えられた選ばれし人間であり、特別区での生活を生涯約束されると言われている。 残りの人々は一般区での平凡な生活で一生を終えることになる。 この格差と記憶の改変やコピーに一石を投じようとしている一般区を代表する政党が俺の所属する組織だ。 この組織は一言で言えば、記憶管理システム推進派の政府に相対する反政府組織である為、権力を握るこの国の重鎮方には鼻につく存在となっているのだが。
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