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更新の仕事が終わった頃には18時を回っていた。昼飯も食べていない。
「どーする。飯食べてから行くか?まだ奴らの到着には時間がある。」
「この時間じゃあ、夕飯ともかぶっちゃいますし、さっさと事務の方片付けて夕飯ガッツリ食べに行きましょうよ。」
「そうだな。じゃあ、行っちまうか。ああ、奴らに会いたくねえなぁ。」
「まったくです。」
まあ、丁度いい機会だ。奴らに盗聴器でも仕掛けてしまおう。こういう仕事に出てくる奴らはセキュリティに疎い。何か情報を得られるかも知れない。
セントラルメディカルセンター。
この一般区では最高レベルの医療施設だ。もちろん、特別区では当たり前程度のものだが。場所をここに設定したのは、医療のレベルもあるのだろうが、一般区上官の特別区に対するせめてもの意地が見えてしまう。まあ、何の意味もない。
ロビー入口の向こうにきちんとスーツを着こなした姿が見えた。メモリーキーパーのお出ましだ。当たり前の様に平然と入ってきた奴らは周囲の来院者に対して嫌悪感すら隠そうとしない。もちろん奴らの中にもまともなのはいるのだが、少なくとも今回はハズレのようだ。
「お待ちしておりました。」
「検体は。」
「はい。25階のVIPルームに移動させました。そこならばメモリーコントローラ全般の機能をお使いになれるかと。」
「案内しろ。」
「はい。どうぞ。」
しかし違和感がある。こんな踏み台でしかない作業にしては随分な装備と大所帯だ。言葉にはしていないが刈谷部長も同じ事を思っているようでエレベーター内では困った顔を見せた。これでは患者にすら不安を与えかねないだろう。
「あの、失礼ですが、何人程でこの作業をするつもりですか?」
「君には関係ないだろ。ただ黙って見ていればいい。」
「はい。すいません。」
案の定、教えてなどくれはしない。今エレベーターには五人のメモリーキーパーがいて、別のに三人程後続で来ている。見た目から判断するとこの五人が作業班、後続が護衛班と考えても、ロビーには十二人待機している事になる。奴らの事だから誰よりも優先でロビーの椅子を占領しているだろう。来院の方々は可哀想なものだ。
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