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王女は勇者の夢を見る
『・・・・・・
そうして悪い魔女をやっつけた勇者様は閉じ込められている姫のもとに駆けつけました。
お姫様は眠っており、勇者様が呼びかけてもいっこうに目を覚ましません。
お姫様は悪い魔女に眠りの呪いをかけられていたのです。
そのことに気がついた勇者様はひどく悲しみ、眠り続けるお姫様の祝福を祈ってキスをしました。
すると不思議な事にお姫様はゆっくりと目を覚ましました。
勇者様の深い愛が魔女の呪いを打ち破ったのです。
目覚めたお姫様を勇者様はお城へと無事に連れ帰りました。
そして勇者様とお姫様は結婚し、いつまでも仲良く幸せに暮らしましたとさ。』
ここはサイ国の王城の一室。
お話を聞き終えたサイ国王女・シエラ、ただいま四歳はほぉっとため息をついて余韻に浸る。そんな娘の姿をサイ国王妃は優しく見つめ、彼女の鮮やかな黄色の髪を愛おしそうになでた。
その心地よさに眠くなったのか、シエラはトロンと眠たげな眼をして、でも一生懸命母親に真っ青な瞳を向けて聞いた。
「私もいつかなれるかしら?」
「ええ、もちろんなれるわ」
王妃はくすくす笑って、既に半分眠っているようなシエラの頬に口づけしてから、
「ステキなおひめ・・」
「勇者様に・・」
母の言葉を遮って寝言のようにむにゃむにゃとシエラは言った。その後はスースーとシエラの寝息だけが部屋に響き、
「・・・あらぁ?」
王妃の疑問の声が一度だけ混じった。
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