【過去話…残った記憶は?】

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ひらひら、と。 綺麗で淡い桃色を持つ桜。 そんな桜達は小雨にあたって更に綺麗になり、 灰色の雲から覗き見れる月の光で脆く見える。 「ごめんね…ごめんね…風香」 その風景を背中にこんな言葉を呟いて 見知らぬ真っ黒な男に預けられた…。 ―――この時から、桜が。 ―――この瞬間から、雨が。 ――――この日から、月と月光が。 憎くて。面倒で。悲しくて。可笑しくて。 楽しくて。愉しくて。笑えて…。 「お前は、これから“人”では無くなる」 ―――この言葉で、人形になって。 ――――この言葉で、全てを捨てて。 大好きな母親から捨てられ。 挙句の果てには元父親の借金の代わりに 組の人達の所で借金免除と言う話で売られ。 慣れろ、と言われ問答無用で。 拷問を受け 薬物を打たれ。 死ぬギリギリまで飲食を抜かれ。 血反吐が出るまで訓練を受け。 指が手が壊れるまで武器の訓練を受けた。 己を人では無く“生きる人形”として 生かされ続ける人生を無理やり選択させられた。 そんな俺が、身を守る為の代償は。 “全てを諦めると言う行為をする事” 始めは苦痛で苦しかった…。 けど、大っ嫌いな義姉様を庇って片目を失っても 不良からボロボロになりながら守っても 全ては当然で、かたずけられ。 片目を失ったのは己らの娘のせいである、と 言うのに全て俺が悪い、と判断された…。
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