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「大丈夫かね? やっぱり、何処か怪我をしているんじゃあないかね?」
駐在さんが心配そうに僕の顔を覗き込んできた。
「……いえ、大丈夫です。思い出して気持ち悪くなっただけですので」
嘔吐物は上がってはこないが、胃が押し上げられる感覚がして吐くときと似た状態が苦しくもあり、気持ち悪い。
「私だけで橋がどうなっているか見てこよう。無理をして余計、具合を悪くしてはいけないしな」
そう言うと駐在さんは立ち上がり、外套を羽織り、常備してある懐中電灯を手に取り外に出ようとした。
「──待ってください!」
何か悪い予感がして駐在さんを呼び止めた。
どういった悪い予感かはわからないが、言い表せないもの、直感、本能といったもので感じたものは確かだ。
「僕も行きます」
僕の呼び止めに駐在さんは一瞬驚いて動きが止まっていたものの、戻ると「大丈夫なら、一緒に来てもらった方が助かる」と言って待ってくれた。
僕は駐在さんと雪の積もった冷たい道を懐中電灯の灯りを頼りに橋を目指して歩いた。
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