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余所者、アリス=リデルの背中を見送りながら葉巻を吸う帽子屋、ブラッド=デュプレは思案する。
訪れる季節は一時的なものだ
いずれ終わりが来る
それまでの間
「舞台裏を忘れて楽しめるならこともなし、
表に背を向け囚われるもまた然り・・・か」
唄うように呟くボスを、腹心の部下はどこか感情を忘れた瞳で横目に眺める。
その目はどこか遠く、現世(うつしよ)ではない在りし日の記憶を思い出しているようでもある。
「さて彼女はどうするのやら」
未だに行動の読めないクルクルと表情の変わる世界の誰からも愛される少女を思い、時計の心臓を持つ帽子屋はそう続けた。
その言葉には、かつて今の腹心の部下が立っている位置に立っていた今はその場にいない元部下を揶揄していると、本人以外の誰も知らず、気づいていないだろう。
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