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さて困った。
一人なら適当でいいけど、誰かととなると、ちゃんと作らなくては。品数も増やさないとだし、男の子ならボリュームもいるだろう。
うーん、じゃあメインを炊き込みご飯にしてボリューム感を出そうかな。
買ってきたものをしまいつつ冷蔵庫を漁りながら私は作戦を練る。
もう、なんでこんなことに。
マサヒロがあんな顔するから。
マサヒロは基本的にキレイな顔立ちだし、物腰も柔らかでスマートだ。飲みにいくときも、お店の人にはまるで貴族のように微笑むのに、時々不意に子供のような顔をする。
それはたいていくしゃっとした笑顔なのだけれど、いつもの姿とは違って呆れるくらい無防備だ。
それを見ると、なんだか守らなきゃいけないものを見た気持ちになる。
さっきの哀しげな顔だってそう。
なんだろうなあ、やっぱり私のことを姉代わりと思ってるんだろうなあ。憧れだったとかいうけれど、マサヒロはひとりっ子だったというから、姉という存在に憧れていたんだろう。
こっちもまるで弟が一人増えたみたいだものね。
1LDKなので、キッチン自体はあまり広くない。そこを駆使して私は急いで料理をした。
今日昼間にしっかり掃除しといてよかったわ。
あ、さすがに洗濯物は隠さないと。
くるくると部屋を動きまわり、準備はだいたい整った。
あ、でもマサヒロが飲むほどにはビールがないな。 それくらい自分で調達してきてもらおう。
そう決めてマサヒロに電話をかける。
『もしもし』
マサヒロは3コール目で出た。
「もしもーし、森野でーす。ごはんできたからいつでもいいけど、くる時にさあ」
『あ、ちょうどよかった!』
マサヒロの弾んだ声が私の言葉を遮った。『今ちょうどお酒買ってきたとこなんです!いまから行きますね!』
「あ、はーい…」
ううむ、ソツのない男だわ。
うちのアキラとは決定的にそれが違うところだ。
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