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まずは、ビールで乾杯だ。
「カスミさん、わざわざついでくれなくても缶のままでよかったのに」
「いちおーお客様ですから」
「一応なの?」
「一応ね」
ふうん、とマサヒロはくすくす笑いながらグラスをあげた。
「んじゃ、まず美味しそうな料理に乾杯」
「はーい、お疲れ様ー」
かちん、とグラスを合わせ、ビールを喉に流し込む。
「ぷはーっ、おーいしー」
そう言った私にマサヒロは笑う。「カスミさん絶対それいうよね」
「そう?」
私は首を傾げる。
「そう。そしてほんとに美味しそうだからこっちも余計美味しくなる」
「キミ最初おっさんみたいって言わなかったっけ…」
「やだなあ、照れ隠しですよきっと」
マサヒロはしれっと適当なことを言って、箸を手に取った。
「ん、この炊き込みご飯美味しい!」
「そう?」ちょっとほっとしながら私は言った。「苦情は受けつけないけど、無理なお世辞も不要ですよ。黙ってていいですから」
「お世辞じゃなく、旨いです」
そう言ってぱくぱくと箸を口に運ぶマサヒロの左手に私はちょっと驚いた。
…お茶碗が、小さい。
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