1人が本棚に入れています
本棚に追加
/113ページ
翌日、榎子は出社前に晴留・定済駅があったと思われる場所へ行ってみた。
「確かこの辺りだったような…。んー、お酒と頭打ったせいで駅の名前も思い出せない。何だったかなー?」
顎に手を添えて歩いていると、曲がり角の先に駅があった。
「あっ!あれかしら」
駅舎に駆け寄って駅名を確認する。
「…残念、違ったわ。場所はここで合ってるはずなのに」
ふと、榎子は昨夜の美玖の言葉を思い出した。
『この駅自体がパラレルワールドだから私は夕方以降、いつでもここにいるよ』
「夕方以降…。会社帰りにまた寄ってみようかな。あっ、会社に行かなくちゃ!遅刻しちゃう!」
榎子は急いで駅を後にする。
並木道を駆け抜け、会社前に立っている顔馴染みの警備員に挨拶する。
「おはようございます!」
「おはよう、今野さん。今日はずいぶん遅いね」
「えぇ、色々ありまして。それじゃ、失礼します」
榎子は会釈しながら、小走りで社内に入る。
更衣室に入ると、雪絵が頭を押さえながらベンチに座っていた。
最初のコメントを投稿しよう!