言葉を濁す理由(わけ)

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翌日、榎子は出社前に晴留・定済駅があったと思われる場所へ行ってみた。 「確かこの辺りだったような…。んー、お酒と頭打ったせいで駅の名前も思い出せない。何だったかなー?」 顎に手を添えて歩いていると、曲がり角の先に駅があった。 「あっ!あれかしら」 駅舎に駆け寄って駅名を確認する。 「…残念、違ったわ。場所はここで合ってるはずなのに」 ふと、榎子は昨夜の美玖の言葉を思い出した。 『この駅自体がパラレルワールドだから私は夕方以降、いつでもここにいるよ』 「夕方以降…。会社帰りにまた寄ってみようかな。あっ、会社に行かなくちゃ!遅刻しちゃう!」 榎子は急いで駅を後にする。 並木道を駆け抜け、会社前に立っている顔馴染みの警備員に挨拶する。 「おはようございます!」 「おはよう、今野さん。今日はずいぶん遅いね」 「えぇ、色々ありまして。それじゃ、失礼します」 榎子は会釈しながら、小走りで社内に入る。 更衣室に入ると、雪絵が頭を押さえながらベンチに座っていた。
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