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急いで教室にたどり着くともうHRは始まっていた。
「おはよう峰沢。後で職員室に沖田と藤堂とくるように」
「はいぃぃ!」
笑顔が怖い先生から逃げるように急いで自分の席に着く。隣を見ると司はまだ来ていないようだった。
「ミネおはよ」
「あ!美樹おはよ。ところで一限なんだっけ?」
「英語だよ」
「うわお。……用意してくる」
私はそう言うとロッカーに向かった。
カツカツカツ………
「えー、このように過去進行形は………」
春先の柔らかな風が吹き込む教室には教師の心地良い声と板書の音が響く。
「………峰沢!」
「…はい!」
先生の声に眠気と戦っていた私は目を覚ました。
「この英文を訳しなさ……「おはようございまーす」……沖田か。」
そこに姿を表したのはゲームの帝王であり私の隣に住んでいる沖田司(一応女)だった。
「あっ!ゆーちゃん!なんで今日は起こしてくんなかったんよ!!おかげで寝坊したじゃないか」
「いやそれオマエが深夜ごろまで起きてたからじゃん」
「……う゛。スイマセンでした」
「わかればよろしい」
二人で話していると近くにいた数人が吹き出した。
「……二人とも今授業中なんだが」
「すいません先生。このドアホが失礼しました」
「え、アホって……。ゆ、ゆーちゃんひどいっ!」
司はそう言うとさめざめと泣き真似をし始めた。
「アホじゃなくてドアホな。後ゆーちゃんて言うのやめろ。クソ兄貴と被るから」
「女の子がクソとかいっちゃいけません!」
「日頃兄貴に向かってカスとか土に還れとか言ってる子のセリフに聞こえないんだが」
私がそう言うと司は少し慌てた顔をした。
「そ、それは今はノープログレム!とりあえず授業の用意行ってきます!」
「おうおう。昼休み職員室来いよお前ら」
「はい!」
彼女はそういうとロッカーに向かった。
「では浅井、問一を英訳せよ……」
眠気との戦いはまだまだ始まったばかりだ。
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