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「まぁね。いくらいい人だって言われても、やっぱり一度でも会ってみたかったかな」
このアパートは、春に大学に入学した頃からずっと目をつけていた物件だった。
外観も内装もモダンでおしゃれで、間取りは2LDKで、学校も徒歩圏内と近い。
空室が出るのをずっと待っていて、ようやく空いたと知ったから、
埋まってしまう前に決めなくちゃと、少し焦っていたのもあるかもしれない。
一人で住むにはちょっと高いけど、
ルームシェアをして、家賃も光熱費も半額で済むなら、ぼろアパートの一人暮らしの料金とあんまり変わらない。
「私、多少性格悪くても我慢するけど、
汚ギャルとか、女同士の恋愛に発展しそうなのはダメかなぁ……。
真琴ちゃん、そこのところ確かめなかったの?」
智ちゃんは引越しのために長い髪を束ねていたシュシュを外して、髪型を整えた。
「なんどもやり取りしたけど、
あなたの性的嗜好は?今の部屋の状況は?
なんて聞いてないよ」
「まぁね……。
それにしても本当にいい部屋だよね。
リビング広いし、個室きれいだし。
お風呂もトイレも、ピッカピカ。
高杉さんが、出てったら私が住みたいな」
智ちゃんは、まわりを見回しながら言う。
「智ちゃんと一緒に暮らしたら、
いろんな男の子連れ込みそうで嫌だなぁ。
私、肩身狭くなりそう」
「ひどいなぁ。そんなことないよ。
そうなったら、外ですませるから」
とにかくルームメイトが少しくらい性格悪くても、
こんな部屋に暮らせるなら我慢できると思えるような部屋だった。
それから10分くらいして、智ちゃんは後ろ髪引かれながら帰って行った。
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