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「今門を開いてさし上げますから、少しお待ちください」
凛とした声が幸の耳に届いた。さながら檻の中の猿のような格好で、ビクリと動きを止める。
「え、あ、う、うん」
……恥ずかしい。
クスクスと笑われ、顔に熱が集まるのを感じる。
下を向いて門から離れると、小さな音をたて今しがた掴まっていた門が開いた。
「ようこそ御越しくださいました。藤野幸くん」
ビックリするような物腰の柔らかさに、伏せていた顔をあげる。
メガネのレンズ越しに、お迎えに来てくれたブレザーの男子生徒の姿を見た。
そして、またしても幸はビックリした。
――その男子生徒の容姿の素晴らしさに。
「あ、ありがとう!……ございます!」
大きな声で返事をし、年上かもしれないと敬語をつけた。
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