『そ』

39/59
2423人が本棚に入れています
本棚に追加
/289ページ
「大丈夫だから、ね?」 いつもよりも穏やかな顔で言われ、春馬は落ち着きを取り戻す。 ……なんか友樹に宥められるの癪なんだけど。 「あのあと……僕も春馬も空き教室に連れ込まれちゃって……」 「ぜんぜん大丈夫じゃないじゃん!? ホントにケガとか――」 「いきなり電話が来て……舌打ちしながら出てったんだ……」 よく見ると優のブレザーのボタンがほとんど見当たらない。ひきちぎられたんだと春馬は悟った。 あまりにも非現実的な出来事を嘲笑うかのような、現実を物語るボタンの有り様に背筋が凍る。電話が来たといっていたが、来ていなかったら――そう思い、軽く泣きそうになった。 「あ、そうだ。優くん、ベッドの上――春馬の近くに座ってくんない?」 言われて優が移動する。ポスッと音がした。
/289ページ

最初のコメントを投稿しよう!