始まり

5/10
前へ
/289ページ
次へ
思わず後ずさった幸の後頭部に、まったく無駄のない動きで手を回す。 「これは、お近づきの挨拶です――」 と、静香の端正な顔が急接近した。 ――あ。 言葉を口にする間もなく、口と口が重なった。 ……あああああっ!! もがいても顔は離れてくれず、幸の頭を押さえる手の力が強まるばかり。 ――このぉっ! 気付けば思いっきり拳を振るっていた。気付けばその拳は静香の顔を殴っていた。 「……あ」 「イタタ……いや、ごちそうさまでした」 頬を擦りながら訳の分からないことを言う静香に苛立ち、突然の出来事に衝撃を受けたのだった。 ……ファースト、キス。 「それでは、行きましょうか」 それもこれもあるかと叫びたかったが、もういいやと諦め、静香に着いていった。
/289ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2424人が本棚に入れています
本棚に追加