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五分、十分――もう少し時間が経って、ようやく二人は泣き止んだ。春馬は静かに涙を流し、優は時折しゃくりあげるような感じだった。
「落ち着いた?」
「……うん」
「ありがと、もう大丈夫」
濡れた目の周りを手の甲で擦りながら答える。友樹のブレザーの両肩は、少し色が変わっていた。
「春馬はもうちょいベッドにいた方が良いよね」
スッと眼鏡を外しながら友樹が言った。胸ポケットに差し込んでから立ち上がる。
「イチゴ牛乳でも買ってくるよ」
「ダメだよ! 一人じゃ――」
「大丈夫だって。俺だよ?」
ニヤッと笑い、「春馬と優くんのも買ってくるねい」と保健室から出ていってしまった。
「……今のさあ」
「根拠ってものが無いよね」
二人で頷いた。
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