『そ』

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《幸サイド》 波乱の自己紹介があったホームルームを終え、幸は校舎内を見て回っていた。 「ありがとな恭夜」 「あ? なに言ってんだ。気にすんじゃねえよ、こんくらい」 クラスの席順でいうと、幸の後ろは恭夜だった。正直とてつもなく安心した幸である。 あのあとクラスに入り自己紹介をしたのだが、そこかしこで囁かれる陰口に心底イラだった幸は思わず、 「お前らなんか、友達にいらない!」 と叫んでしまったのだ。 すぐに後悔したが時すでに遅し。陰口に拍車がかかったのは雰囲気で分かった。 あーもう、失敗したぁ……。 陰口を叩くなら自分の知らないところで叩いてほしい。本気でそう思った。 「暗い顔してるじゃんか。疲れた?」 とてつもなく爽やかな笑顔で、優しい言葉と共に肩を叩かれる。隣の席にいた、西条蛍斗(さいじょうけいと)である。
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