作戦開始

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――ジェームス・アレン――  森というのは、人工林なども含めると割と身近にあるもので、なのにある時は憩いの場となれば、ある時は薄暗く、奥の見えない影の領域と化す。  もし、森をその2つの顔で分けてしまうのならば、今自分がいるこの森は、人を寄せつけない不気味な場所なのだろう。密集して立ち並ぶそれらが不気味に枝を上へ上へと伸ばしている光景は、好きになれなかった。  日が地平線の彼方へ少しずつ傾きはじめ、空に不規則に浮かぶ大小様々な雲たちの表面の凹凸がくっきりと見える。天よりも先に雲が染まり始めているのが不思議に見えた。動いているようで動かないそいつらの影と、紅く、濃く染められた部分の対比が美しく、またどこか恐ろしかった。 そんな空を視界の一部に入れながら、私は木々の間を進んでいく。決して速くなく、決して遅くなく、一定のスピードを保って。正面に構えたライフル――H&K G36k――が木の幹に当たらないように気を配りながら、自分の数メートル前方を先導するセイント大尉の背中を追う。 「こちらレイダー4-3、配置に着いた」 「了解、4-3。状況は?」 「目標の南西と北側の地点に見張りが1人ずつ。南東側の部屋に1人。いずれも小銃で武装」 「了解、その場で監視を続けろ」
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