Period3 柔よく剛を

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体育館に並んだパイプ椅子は、両隣や前後との間隔が十分でなく、とても居心地が悪い。 こんな狭いところに詰め込まれてよく平気でいられるな、と思った。 人の多さに目が回りそうだ。 壇上では校長先生や市長などのお偉い方々が、なにやら順番に話をしている。 いつもなら左隣に犬岡、右隣には松木が座っているのに、と大賀は考えていた。 入学式が終わり、教室へ戻っても気分が晴れない。 勉強や大学進学の言葉が並ぶ担任の話も聞き流し、窓の外を眺めながらため息をついた。 ガラッ 突然教室のドアが開き、全員の視線がそこに集まった。 「すすすすいません!船のエンジントラブルで遅れてしまいました。」 教室中がどっとわき、爆笑の渦が巻き起こった。 「(うわっ、でかー!)」 その男は身をかがめて教室に入ると、丁寧にドアを閉めた。 「ミゾヤくんだね、連絡は受けてるよ。座りなさい。」 「はい、すみません。」 ドスッと音を立てながら椅子に腰をおろす。 まだ高さ調節のされていない椅子が低すぎて、まるでママゴトのセットのようだった。 恥ずかしそうに顔を伏せるミゾヤという大男の姿がひどく滑稽で、陰鬱だった気分が少し晴れた。
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