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それから、数ヶ月経った。
佐原さんとは週に1回程度の割合でデートをしていた。
デートと言っても、お互いが不本意な結婚。
父の建前だけのデート。
一緒に食事をして、たまに映画に行って。
特に盛り上がる訳でもなく、
あたしの気持ちにも変化のないまま、
ただ時間だけが過ぎていった。
そんなある日。
家で夕飯を食べていた時。
何の気なしに言ってみた。
本当にどうにかなるんじゃないか、なんて考えはなくて。
ただ、本当に何の考えもなく。
「お父さん、あたし佐原さんと結婚しなきゃ駄目?」
この一言がまずかった。
「どういう事だ」
父は、初めてあたしに反抗されたと思ってしまったらしい。
会社の部下は勿論、あたしや母だって
父には口答えをした事はない。
あたし達が、父は絶対条件。
そう思っている様に、
父も、自分が絶対条件だと思っていた。
「いや、別に聞いてみただけ、です」
そう言ったのに。
まさか、あんな事になるなんて…。
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