過去

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その当時。 あたしは高校の教師をしていた。 そして片想いの相手は、その高校の生徒。 だけど、彼には彼女がいた。 なのに、あたしは諦められなかった。 会う度に、どんどん彼に惹かれていった。 どうしても彼を手に入れたかった。 あんなにどうでもいいと諦めていた結婚さえも、この時には嫌で仕方なかった。 そして結婚がリアルになっていく中で、 あたしは時間に焦っていた。 やっぱり、あたしにはしっかりと父の遺伝子が受け継がれていたんだ。 あたしは、手段ん選ばなかった。 たった一度、彼と体を重ねて、 あたしは、佐原さんとの子どもを 彼の子どもだと嘘をついて、 彼を、手に入れた。 今までずっと、我慢してきた。 好きな人の隣にいる。 そんな、些細な幸せを。 あたしだって、そんな小さな幸せ位、手に入れたって良いじゃない。 あたしだって一人の人間。 操り人形なんかじゃない。 それに、確かにあたしは汚い手を使った。 だけど取られる方だって、悪いんだ。 あたしは、そう自分に言い聞かせてた。
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