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そして、それから数週間後。 式を来週に控えたあたし達は、 新居で一緒に暮らす事になった。 「何か高そうなマンションだけど、 あんたが家賃払うの?」 「未来の旦那様にあんたはねぇだろ」 後に分かった事、こいつは口が悪い。 お父さんの前では猫被ってやがったな。 って、当然か。 自分の会社の社長なわけだし。 それに、あたしもあんな過去を知られている訳だから、今更良い子を演じるつもりはない。 「じゃあ、佐原さん。」 「来週には、お前も佐原さんだけどな」 「…呼び方なんかどうでも良い! あたしの質問に答えて。家賃は自分で払うの?」 「当たり前だろ。」 「あの…別にもっと家賃が安いところで、良いよ?」 別に甘々な新婚生活を期待している訳でもないし。 「ここはセキュリティがしっかりしてる。 だから此処にした。」 「あら、お優しい事。」 「別にお前の為じゃない。」 「あ、そ」 そう言うと佐原さんは 目の前のドアノブを捻り、ドアを開けた。 「ほら、何ボーってしてんだよ、行くぞ」 あたしの未来の旦那様は、 無表情で冷たくて、口が悪い。 「あ、そこ。つまずくんじゃねぇぞ」 その上、心配性で口うるさい。 「分かってるし」 「お前の為に言ってんじゃねぇ。 子どもの為に言ってんだ」 お互いに愛情のない夫婦。 この先、やっていけるんだろうか。 そんな不安を抱きながらも、 あたしは新居へと足を踏み入れた。
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