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明かりもなく、静まり返った部屋。
そんなに広くないシングルベッドで手足を伸ばす。
何だか、寂しいな。
そんな時、ふと思い出す。
彼の事を。
嘘を吐いてまで、手に入れたかった彼の事。
彼と体を重ねたのは、一度だけ。
その時、彼の隣で眠った事を思い出す。
大好きな人の体温はとても優しくて。
今が一番幸せだって思えた程だった。
あたしは、これから先、
もう二度とあんな幸せを感じる事が出来ないんだ。
あたしの人生ってなんなんだろう。
「………」
違う。
あたしには、この子がいる。
あたしは、そっとまだ膨らみのないお腹に手を置いた。
好きな人との間に出来た子供じゃないのに、
不思議な事に今、自分のお腹の中にいるこの子が愛しくて堪らない。
これが母性本能ってもんなのかな?
絶対に産みたいと思うし、
これから先、守ってあげたいとすら思う。
そして、あたしが欲しかった愛情をこの子に注ぐんだ。
お金なんかじゃ買えない愛情を。
早く会いたいな。
楽しみで堪らない。
産まれた日の事を想像しながらも、あたしは眠りについた。
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