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そして。
何の状況も変わらぬまま、
あたしは24歳の誕生日を迎えた。
毎年行われる誕生日パーティ。
父は、あたしの誕生日に恐ろしい事を言った。
「美結、彼が結婚相手の佐原 和哉くんだ」
その時の感情は…
諦め、だった。
あぁ、あたしは結婚相手までも自分では選べないんだ。
あたしの一生は父の決めたレールの上。
「よろしく」
彼、佐原 和哉は右手を出して小さく微笑む。
切れ長の目に、程良く鼻筋が通っていて、
形の整った唇。
それでいて長身で、見るからに仕事が出来そうな感じだった。
「彼は、業績もトップのエリートだ。
美結の二つ年上だ。まだ若いのに大したもんだよ。」
だからと言って、初めて会うその人に一目惚れ。
そんな都合の良い事なんてある筈なんかなくて。
「こちらこそ、よろしく」
何処か冷たさを感じる彼。
きっと、彼も不本意な結婚なんだろう。
地位と金、それだけの為に、
あたしと結婚するんだろう。
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