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一番後ろの真ん中の席の俺は
机の間をゆっくり歩く。
前に先生と話した内田が泣き止んだ顔を手で隠しながら席へ戻る。
俺は教室の真ん中まで行くと、
そこには
誰も座っていない机
その机を右手でさらりと撫でて
その歩みを止めずに教卓へ向かう。
先生の涙はもう止まり、
少しだけ顔が固くなっているのがわかった。
笑っているけど、笑っていない。
無理に笑おうとしている。
筋肉が無理に動くから不自然だ。
目の奥が怯えている
温度を持たないビー玉のように。
教室の空気が少しずつ下がってくのが首筋で感じ取れる。
そして、俺は教卓へついて先生と向かい合う。
先生はなかなか口を開かない。
いや、開けないのだ。
話す言葉を一生懸命探している。その目がふるえている。
周りの生徒たちも黙ってみてる。いや、おそらく見てないだろう。俯いてるやつらばかりだ。
俺は、口を開いた。
「先生、ありがとうございました。さようなら。」
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