学校一番のお便利屋さん

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光は今日も今日とて眠る前に日記をつけていた。 本当は知美の宿題を終わらせた後なので眠いのだが、欠かしていない。 祖母への祈りを捧げてからスラスラ今日の善行を記していく。 あらかた進めると、ペンが止まった。 「今日は良い日だったなぁ…10番さんにも会えたし。 上かな…下かな? …やっぱり上だよね。」 光にしか分からない専門用語が出る。 光は基本的に人が良い。 だが、こういったところで他人との間に壁が出来ていた。 もともと光のような面倒な人間に関わる変わり者は少ないが。 だから、光は友達がいなくても満たされていた。 彼女を満たすのは善行なのだから。 「…少し休憩…わぁ…きれいな流れ星!」 部屋の窓から夜空を見上げると…きれいな星空だった。 流れ星が落ちる。 光は流れ星に祈りを捧げた。 ーもっとたくさんの人たちが幸せになりますように。ー 光はそうやって、いつも神に祈る。 彼女は善行だけではなく、神頼みも欠かしていなかった。 少し外の空気を吸って気持ちを落ち着かせる。 そのまま再び日記をつける。 書き終われば、幸せな気持ちで眠りにつく。 今日は、とても良いことがあった。 人助けは光にとっては珍しいことではない。 だが、光は『10番』を手に入れた。 何度も繰り返すが、彼女にとって今日は特別な1日。 彼女はなぜかそう感じた。 そして、光のカンは計ったように当たることになる。 今日は確かに、彼女の新しい未来の始まりだった。 『輪』が回り始めたのだから。
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