正義の味方は15番

3/14
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/57ページ
放課後も、光はやはり善行を積んでいた。 彼女の行動パターンはそれしかない。 普通に掃除をしている光。 今日は掃除当番ではなかったが…クラスメートの一人がズル休みをした。 「すまんな、間蔵野。 ちょっと腹が痛くてな。」 「私も、寒気が…。」 子供がつく嘘だが、光はすぐに騙される。 帰り際に、次々体調を崩す生徒がいるわけないのに。 「大丈夫? 掃除は私がやっておくから、早く休みなよ。」 内心腹黒いところを見せたクラスメートは、喜んで光に雑用を押し付けて去っていく。 仮病なんて気づく訳がない。 本当に光は人の良い奴だ。 光に掃除を押し付けた二人の生徒は、駆け足で校門を飛び出した。 帰りには足取りも軽くなる。 「…本当、あいつもよくやるよな。 掃除なんて何が楽しいんだか…わざわざ自分からやるんだ。」 信じられるかと肩をすくめる。 「善人ぶって可愛くねぇよな。 頭おかしいんじゃないのか。」 心ない嘲笑。 だが、だいたい人間などこんなもんである。 善人が好かれるものと思ったら大間違いだ。 むしろ嫌われるもの。 光のようなやり過ぎは別にして…善人というものの感想はこんなものではなかろうか。 善人は人を幸せにはしない。 善人はうざったいだけだ。 「とりあえず、今日はどっか遊びに行くぜ。」 サボりで得た有意義な時間は遊びに消えていく。 「いいな。 映画でも行こうぜ!」 サボり魔生徒の二人は意気投合した。 そのはるか頭上を、奇妙な機械のようなものが旋回している事を知らずに。
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!