正義の味方は15番

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「…ふぅ、やっと終わった。」 有意義な善行(やらなくても良い掃除)を済ませた光は、満ち足りた笑顔をこぼしながら掃除用具を片付けた。 「今日も良い日だなぁ。 今日は何人の人を幸せにしたんだろう。」 本人は全く気づいていない。 光の善行でサボりで楽こそすれ…幸せになった人間は一人もいないことを。 しかし、誰ひとりとしてそれを指摘しない生徒がいないのも事実。 光の手助けは忙しい現代社会では助かっているし、アホに関わりたくもなかった。 だから、バタバタしはじめてもあまり当てにしない。 バタバタ、バタバタ…。 急に校内が騒がしくなる。 「あれ? みんな…何を急いでいるんだろう?」 善行のひと句切りがつき、ようやく帰り支度を始めた光は校内で足音が大きくなっていることに気づく。 「…何かあったんですか?」 生徒の一人を捕まえて聞いてみる。 バシッ! 捕まえた手は払いのけられた。 「…?」 「あんた、邪魔よ!」 焦った素振りの女子生徒は、光を全く当てにしていない。 頼りにされていない…学校一番の働き者が。 「…。」 光はちょっと寂しくなった。 「間蔵野さん?」 保健室の先生が、光に声をかけてくれた。 「先生?」 ちょっと嬉しかった。 「校門のあたりで、生徒たちがいきなり眠り始めたの。 保健室に運ぶから手伝って。」 奇妙な状況に耳を疑ったものの…疑うことを知らない光はためらうことなくついていく。 「はい!」 元気な返事を返して。
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